CPIに住宅価格要因を組み込んだ後の中国の実質金利に関する研究
PLOS ONEに掲載されたDingら(2023)の研究は、消費者物価指数(CPI)に住宅価格係数が組み込まれた後の中国の実質金利を調査したものである。この研究は、中国の実質金利の計算を更新し、学術研究や政策立案の参考とすることを目的としている。
背景
中国経済は長期的な移行改革を経ているが、金融部門には金融抑圧という計画経済の特徴が残っている。金融抑圧の存在により、中国の実際の金利水準はCPIよりも低くなるはずである。しかし、中国の公定歩合と消費者物価指数から計算すると、1999年から2022年までの半分以上の年において、中国の実際の金利水準は消費者物価指数よりも高くなる。これは中国に存在する金融抑圧と矛盾しており、その主な理由は中国のCPIの計算方法にある。中国のCPI測定システムは計画経済時代に由来し、住宅購入価格の上昇を十分に考慮していなかったため、現在のCPI測定システムは住宅価格の上昇を考慮することで、より現実的なものとすることができる。
方法論
本研究の核となる考え方は、関連する公的統計データを調査し、中国居住者の総支出に占める住宅購入支出の割合を算出することである。住宅購入の割合を住宅価格要因のウェイトとし、その他の消費の割合を公式CPIのウェイトとすることで、一般化消費者物価指数(GCPI)が算出される。そして、GCPIを市場金利と比較することで、過去20年間の中国の実際の金利状況を把握する。
結果
本研究の結果、GCPIを指標とした場合、中国の実質金利は1999年以降ほとんどの年でマイナスであることがわかった。
結論
本研究は,住宅価格をCPIに含めることで,中国の実質金利の計算を更新し,学術研究や政策立案の参考となることを結論づけた。また、中国の実質金利に影響を与える可能性のある他の要因を探るために、さらなる研究が必要であることも示唆している。